手書きすること、美しく書くということ(2025年4月号)

法華義疏(ほっけぎしょ)は、「法華経(ほけきょう)」の注釈書で、聖徳太子(五七四~六二二)自筆の書であり、現存するわが国最古の肉筆の書として知られます。法華義疏は、随所に加筆、修正の跡があり、清書ではなく、草稿であることが分かっています。聖徳太子は上宮厩戸豊聡耳皇子(かみのみやうまやどのとよさとみみおうじ)と呼ばれ、一度に十人の訴事を聞き、裁決し、誤ることがなかったと伝えられます。日本史を勉強し…

続きを読む

紙の表裏や印のはなし(2025年3月号)

誌上展の作品制作も佳境に入り、表題のようなことについて多く質問があり、お答えしたいと思います。  まず紙の表裏についてです。一般に、紙のつるつるした面を表、ざらざらした方を裏と呼んでいます。手漉きの紙なら、乾かすための鉄板にあてた方が表になります。また機械漉きなら、ロールで巻き上げる外側か内側かで表裏が決まります。日常使うコピー用紙やノートも機械漉きですが、普段表裏など気にせず使っていることで…

続きを読む

書体と文字の大きさについて(2025年2月号)

江戸時代、寺子屋が読み書きの教育の場としての役割を果たすようになり、日本人の識字率は高まります。江戸幕府の政策である「公家諸法度(くげしょはっと)」においても学芸に精進するべきことが強調されていました。「触(ふれ)」や「達(たっし)」といった文書による法令で領民を統治しようとしたことも相俟って、積極的に読み書きが推奨されたのです。当時、日常使用の書体は、草書体もしくは草書体に近い行書でしたが、貝…

続きを読む