落款を大切に(2020年6月号)

作品を書いた後、年月日や詩文の作品名、題名、自分の名前や印を押します。これを総称して落款(らっかん)と呼びます。子供の作品でも、学年、名前などと書きますが、もちろんこれも落款です。「落款全幅を破る」という言葉があります。これは落款で失敗すると、作品全体が台無しになるということで、落款の書きぶりは作品全体の出来を大きく左右するものです。  それではよき落款とは何かと問われれば、上手に書けていれば…

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紙を使いこなすには(2020年5月号)

少し前に、実用毛筆部で奉書紙を使う課題が出された際、皆さん色々なところで奉書紙を求めたようで、私の聞き及ぶところによれば、その一枚あたりの価格は十倍以上の差があり、また、書き易いとかにじみが強くて書きづらいとか色々な感想を伺いました。  奉書は、もともと主の仰せを侍臣や佑筆が奉り出す文書の意味で、奉書紙はこの用途に使われた紙質のことを指します。楮(こうぞ)の皮が原料で、やわらかく厚みがあり、「…

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書き込む(2020年4月号)

 書の稽古において「書き込む」ということは必須です。それはまるで体育のように他から見たら繰り返し同じことを練習します。そこには知識の修得とは別の身体性が大きく関わってくるからです。  「書を学ぶは急流を沂(さかのぼ)るが如し、気力を用い尽くして旧処(きゅうしょ)を離れず」という言葉があります。これは、懸命に書の稽古を積んでも、上達を実感しづらい、ということでしょう。自分で書いた書の良し悪しは、…

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